平成19年度の数学部会の見学研修会が,平成19年8月10日(金),船橋情報ビジネス専門学校において実施されました。当日は千葉県内の各高等学校から49名の先生方が参加されました。
1 はじめに
数学部会では,今回初めての試みとして参加者が自ら学ぶ「ワークショップ」形式の研修会を行いました。船橋情報ビジネス専門学校のご厚意により,会場をお借りすることができました。数学部会の委員を中心とする講師による,数学に関わるコンピュータ・ソフトウェアの操作方法の研修,及び東洋大学工学部准教授吉野隆先生による講演を中心とした多彩な内容の研修会となりました。
2 開会
中村秀夫副部会長による開会の挨拶のあと,船橋情報ビジネス専門学校鳥居高之校長先生からご説明いただきました。「若者をハッピーに」という教育理念のもと,アットホームな校風を大切にしたきめ細かい学習指導・就職指導をされているとのお話がありました。また,充実した学資サポート制度についても詳しくご説明いただきました。
3 講義
事前の参加希望調査に基づき,2つの会場に分かれて,午前の部として ①講義A-1「統計学入門」,②講義B-1「pTeX入門」さらに午後の部として ③講義A-2「教材には使えないかもしれない多面体の話」,④講義B-2「FunctionView入門」のそれぞれ2時間ずつの研修を行いました。
(1) 講義A-1「統計学入門」
講師:清水高等学校 加藤忠彦先生
東葛飾高等学校 佐藤基仁先生
EXCELを使い,前半は平均や標準偏差から,度数分布表の作成,ピボットテーブルによるクロス集計表の作成を行いました。後半は検定の種類と活用方法として,t検定,カイ二乗検定,F検定を,それぞれどのような場合に活用されるかという点について学習しました。
(2) 講義B-1「pTeX入門」
講師:柏陵高等学校 氏家 悟 先生
佐原高等学校 鹿野敏一 先生
数式を美しく組版できるソフトが「TeX」ですが,残念ながらインストール作業が複雑なため,手をつけにくい人が多いのも現実です。そこでこの講義では,受講者全員がノートパソコンを持参し,実際にTeXをインストールしました。とても1人ではインストールできる自信がない手順も,講師の氏家先生,鹿野先生がとても丁寧に説明してくださり,受講者全員がTeXに関連した一連のソフトをインストールすることができました。
(3) 講義A-2「教材には使えないかもしれない多面体の話」
講師:東洋大学工学部環境建設学科 准教授 吉野 隆 先生
はじめに「すべての直線は2点で交わる」という性質を持つ『球面幾何学』(主に球面二角形,球面三角形の面積)に関して,クイズや小道具を交えて紹介がありました。さらに話題は『オイラーの多面体定理(凸多面体において,頂点の数をV,面の数をF,辺の数をEとするとV+F−E=2が成り立つ)』や『正多面体,準正多面体と自然科学との関連』に及び,フラーレン(フラーレンとは炭素からなる球殻状のクラスターであり,中でも60個の炭素からなるC60は正二十面体対称性という非常に高い対称性を持ちます) や円石藻(表面に円盤型の構造を持つ植物プランクトン) の構造などについて,模型なども利用して,非常に興味深くわかりやすくお話しいただきました。特に,後半の自然科学との関係のお話はたいへん興味深いものでした。
(4) 講義B-2「FunctionView入門」
講師:鎌ヶ谷西高等学校 相浦敦先生
四街道高等学校 横田弘之先生
前半は各種関数のグラフの表示方法とともに,パラメータの値によってグラフが変化する様子や,定義域の区間を動かすと2次関数の最大値・最小値が変わっていく様子をわかりやすく表示する方法など,授業で活用できる機能を学びました。後半はグラフの描画機能を平面図形の作成に利用する方法が解説され,三角形の内心や内接円などを手軽にかくことができ,今後の教材プリントの作成にも大変役に立つ講習となりました。
4 おわりに
船橋情報ビジネス専門学校のスタッフの皆さんの心配りとご協力のおかげで,有意義な研修を行うことができました。受講された皆さんもいへん熱心に取り組まれ,「たいへん参考になった。」という声が多数聞かれたように,数学部会の「手作り」の感覚を大切にした有意義なセミナーになりました。新しい試みは大成功であったと思います。