平成22年度見学研修会報告
今年度の数学部会の見学研修会は,平成22年8月6日(金)に千葉商科大学において実施され,県内の各高校から42名の先生方が参加されました。その内容の概略を報告します。
1 はじめに
今回の見学研修会では,千葉商科大学商経学部・政策情報学部・サービス創造学部のご協力により,参加者は,それぞれ大学の先生方による講義を午前の部1講座,午後の部2講座ずつ受講しました。また,学長 島田晴雄先生による講演もいただきました。施設見学では,図書館に保管されている貴重な資料等も見学することができました。
2 講演「政権交代と日本の将来」
講師:千葉商科大学 学長 島田 晴雄 先生
千葉商科大学は社会科学の総合大学として,それぞれの学部が特徴的で実学にふさわしい教育を実現していること,また学生の起業を積極的に支援していることなど,大学についてのお話をうかがいました。そして,参議院選挙の結果をふまえ,国民の民主党政権への期待と現実,日本経済を劣化させる経済政策,日本を再生する経営戦略について大変わかりやすく解説していただきました。
3 講義
午前の部
(1)A-1
「戦略的経済分析」
講師:千葉商科大学商経学部准教授 内海 幸久 先生
この講義では,ジャンケンゲームを例として,ゲーム理論を使った経済分析。また高校で勉強する数学(微分や漸化式,ベクトルなど)の内容を利用して,企業における利潤追求の話など経済政策について説明していただきました。数学的な発想は社会科学のみならず文学や歴史学まで,あらゆる分野において応用されているとのことです。
(2)A-2
「母関数を用いた数え上げ入門」
講師:千葉商科大学商経学部准教授 宮田 大輔 先生
母関数を用いた数え上げの問題について解説していただきました。その問題の背景として,先生が共同で研究を行っている遺伝子配列に関する問題があり,ある条件を満たす遺伝子配列がどれくらい存在するのかという解析事例について紹介がありました。現在これからの研究にむけて,おもしろい遺伝子がないか探しているところだそうです。
午後の部
(3)B-1
「IT社会基盤の基礎となる数学」
講師:千葉商科大学政策情報学部教授 大矢野 潤 先生
現代社会では,確かな情報技術に基づいた政策立案,そして豊かな政策を指向した情報技術が不可欠であることから,安全な電子政府や電子商取り引きの基盤となる数学についての説明がありました。社会基盤としての情報システムを具体的なプログラムを例に解説していただきました。
(4)B-2
「分散コンピューティング」
講師:千葉商科大学政策情報学部准教授 久保 裕也 先生
「分散コンピューティング」はネットワーク接続した多数のコンピュータでプログラムを同時並行的に作動させ,より高性能な処理を実現する技術であり,その仕組みの説明や具体例の紹介をしていただきました。アンケート処理など教育現場でも有効に活用されていることがわかりました。
(5)C-1
「確からしさの数理 〜ベイズ統計による推測〜」
講師:千葉商科大学サービス創造学部教授 神保 雅人 先生
ベイズ統計が最近注目を集め始めたのは,2001年にマイクロソフト社が「ベイズ統計を利用する」と言ったことがきっかけということです。ベイズの定理に基づく統計理論は,新たな推測の方法を生み出しスパムメールのフィルタリング等,様々な分野で利用されていること,その基本的な考え方を説明していただきました。
(6)C-2
「画像・映像圧縮技術の基礎から最新動向まで」
講師:千葉商科大学サービス創造学部准教授 鎌田 光宣 先生
JPEG,MPEG-2,H.264/AVCを中心に離散コサイン変換を用いた画像・映像圧縮技術の仕組みや,今,話題の地上デジタルテレビ放送の放送規格,3Dテレビ等について,いろいろな画像を実際に写しながら,解説していただきました。