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ご挨拶

千葉県高等学校教育研究会数学部会会長

田口 英彦(たぐち ひでひこ)

 

 令和6年度総会におきまして第31代部会長を拝命しました田口です。よろしくお願いいたします。本部会は、千葉県高等学校数学教育担当職員で組織され、会員の資質の向上と親睦を図り、高等学校数学教育の振興を目的として昭和25年に発足し、今年で75年目を迎えました。この間、多くの諸先輩方が目的達成のために御尽力され今日に至っています。

 

1 数学部会の主な行事

 

 令和2年度からの数年間は、新型コロナウィルス感染症の影響により、数学部会においても幾つかの総会や行事等が中止や形を変えての実施となりましたが、令和4年度には、ほぼ通常に近い形で行事を実施し、令和5年度からはコロナ禍前と同様に活動しています。

 

 部会の主な活動としましては、①総会・春季研究大会(6月)、見学研修会(7月または8月)、秋季研究大会(11月)があります。

 

 ①の春季・秋季の研究大会は県内の高等学校を会場として行われています。春季大会は千葉市以外の地域で、秋季大会は千葉市内で開催しています。研究大会では会場校の先生方の御協力で研究授業を参観させていただいています。学校を会場として研究大会を開催させていただくことで、会員は公開授業の参観を通して他校教員の指導実践や生徒の様子を直接見学することができ、貴重な授業改善のための研修の場となっています。また、研究大会では、研究発表や講演会も行っており、特に講演内容や講師の選定については指導法に関する課題の解決や教材開発等、日々の指導で参考になるものや、国の動向や教育課題等数学教育に直結する題材を設定するようにしています。会員の先生方にとって今後の教育実践に役立つような内容を慎重に役員会で検討して決定しています。

 

 令和6年度の①総会・春季研究大会は6月19日(水)に県立茂原高等学校で開催し会場校の先生方には第2時限を授業公開していただきました。総会では令和5年度事業報告、収支決算報告、監査報告、令和6年度事業計画案審議、予算案審議の後、令和6年度地区委員、部会長・会計監査推薦、その他の役員委嘱等を行いました。研究発表では、県立若松高校の伊藤泰隆先生、県立船橋東高等学校の杉村秀人先生による「令和6年度大学入学共通テスト(数学)のアンケート調査結果について」の発表がありました。講演では、千葉大学准教授辻山洋介先生による「高等学校数学科における教材研究と授業づくりの視点」という演題で問題発見・解決の過程に着目して、約90分間にわたり、大変有意義なお話をしていただきました。

さらに、今年度の秋季研究大会は、県立千葉商業高等学校で開催する予定です。

 

 見学研修会は、日頃とは異なった環境で大学教授や研究員等から御教授いただき、幅広い観点から数学を捉える機会として開催しています。今年度は、千葉大学医学部における見学等を、改めて大学の御厚意により開催する予定です。

 

 この他、夏季休業中に開催される県教育委員会主催の高等学校教育課程研究協議会(数学)は本部会との共催で行っています。今年度は8月6日(火)に千葉県立千葉女子高等学校大会議室において開催する予定です。

 

 

2 数学部会所属委員会の主な活動

 

 本部会には、研究委員会と編集委員会の2つの委員会があります。

 

 研究委員会は大学入学共通テストについてのアンケート分析、学習指導、大学入試関係、学習指導要領・教育課程等の研究を行い、その成果を全国大会や関東大会などで発表しています。

 

 また、編集委員会は部会誌『α-ω』を刊行し、本部会の活動や研究成果等をまとめ、県内の数学科の全先生方に配付しています。本部会誌は昭和39年の創刊以来、今年で第62号を数え、長年にわたり数学教育全般の啓発活動に寄与してまいりました。また、これらの活動を数学部会ホームページで、日本だけなく世界の数学教育関係者にも発信しています。

 

3 終わりに

 

 文部科学省は、人工知能(AI)やビックデータなどの活用が急速に広がり、画像処理や暗号技術、金融など数学の知識が求められる場面が増えている中で、社会が抱える課題解決に数学人材を活用する方向で検討しているようです。また、米英などでは、「数学は全ての科学技術の発展に不可欠」として、研究所の設立や投資なども活発化しているようです。

 今後とも私たち数学教育に携わる者は、生徒が将来の社会生活に適応し成功するためにも、ソーシャルスキルはもちろんのこと、それに加えて批判的な考え方、複雑な問題を分析して解決する能力、創造性と革新性、このような力をしっかり習得させられるよう考えていかなければなりません。

 

 一昨年度入学生からスタートした新教育課程のもと、本部会では次代に必要となる資質・能力を育むための教育をいち早く研究し、先生方の参考になる取組を積極的に行ってまいります。このホームページを活用し、広く数学教育関係者と様々な情報を共有することで、より高い内容に充実させていきたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。


 

日誌

行事の記録 >> 記事詳細

2011/06/30

平成23年度総会・春季研究大会

Tweet ThisSend to Facebook | by:氏家悟
平成23年度千葉県高等学校教育研究会数学部会総会・春季研究大会が,以下の開催要項にしたがって,実施されました。

参加人数: 84 名
1 主 催 千葉県高等学校教育研究会数学部会
2 後 援 千葉県教育委員会
3 期 日 平成23年6月1日(火)
4 会 場 千葉県立木更津東高等学校
5 日 程 受付(弁当注文)  9:00~ 9:45
公開授業(2限)  9:50~10:40
総     会  10:50~11:40
連 絡 事 項  11:40~11:50
昼 食・休 憩  11:50~12:50
研 究 発 表  12:50~13:50
講     演  14:00~15:30
研 究 協 議  15:30~16:00
閉     会  16:00

6 内 容
(1)総会
①挨拶(部会長,教育委員会,会場校校長,会場校数学科主任)
②議長選出
③議事
ア 平成22年度事業報告
イ 平成22年度収支決算報告,監査報告
ウ 平成23年度事業計画案審議
エ 平成23年度予算案審議
オ 千葉県高等学校教育研究会数学部会地区割再編及び規約改正
カ 平成23年度地区委員選出及び部会長,会計監査の推薦・承認
キ その他の役員委嘱
ク その他
数学部会総会

(2)研究発表
①「平成23年度大学入試センター試験(数学)のアンケート調査結果について」
千葉県立佐原高等学校  宮部 智哉 先生
千葉県立成東高等学校  大木 喜信 先生
発表内容  ア アンケート結果(受験生)
・数学の受験型
・得点分布
・志望学部
・得意とする項目,苦手と
・問題ごとの難易度,正答
・全体を通して問題の程度
・受験勉強の開始時期
イ アンケート結果(数学科主任)
・各問題の難易度,計算量
・各問題について,思考力を必要とするか?
・各問題について,学校の授業(補習を含む)だけで十分だと思うか?
・問題の量は?
・数学全領域のバランスは?
②「学校評価における評価項目・指標等を検討する際の視点の考察
-教育課程・学習指導(授業評価)の質問項目の研究・分析-」
千葉県立千葉東高等学校  鈴木 善光 先生
発表内容  自らの授業の展開・指導の有用性を確認するため,実態を踏まえて授業評価し,「授業力」の向上に反映できるように授業評価の在り方を考察した研究。
数学アンケート結果(後期期末考査を終えて)
・進路志望は文理どちらですか?
・大学受験等で数学を使いますか?
・授業の進度は?,授業の説明は?,授業での説明の仕方は?,授業で扱われている内容は?,授業の展開・形式は?,1年間のあなたの数学の授業・学習への取組は?
・1年間の授業に対する意見・感想
・あなたにとって数学とはどんな存在ですか?
(3)講演
「3次方程式のカルダノの公式と複素数のべき根について」
明治大学 理工学部 准教授 阿原 一志 先生
数学部会春季研究大会講演
講演の概要
3次方程式のカルダノの公式は,どのような歴史的経緯のもとで生まれたのか?そして,その後の複素数をめぐる数学にどのような影響を与えたのか?そのような話を中心に,3次方程式の解の公式の話をしてくださいました。以下が,お話の概略です。
1次方程式と2次方程式は,古代バビロニアでも考えられていたが,解は有理数として扱っていました(ルートの表もあった)。無理数の定義はピタゴラスで,「万物は数である」の「数」とは「有理数」のことでした。
16世紀,イタリアでは数学の競技があって,賞金もあったといわれている。公式は,秘中の秘とされ,師匠が弟子に秘密裏に伝承するものでした。3次方程式の秘蔵の解法を身につけたタルタリアという人から,カルダノは誰にも教えないという約束でその解法を入手しました。しかし,カルダノは「アルス・マグナ」という本に掲載してしまったのです…。
これが「カルダノの公式」ですが,「複素数の3乗根」が出てきてしまう場合があり,当時はこれを解なしと扱っていました。公式は不完全か?これをどう解決するかというと,例えばx^3=6x+4は,ド・モアブルの公式を使って偏角から求めると,実数解x=-2が求まります。この内容は,高2の3学期ぐらいで十分やれるのではないでしょうか。
「3次方程式が解けるようになった」という意味で,カルダノの公式はすごい。16世紀に定義はされていた虚数について,デカルトなどは現実にはありえないから考えなくていいとしてきましたが,こうして虚数が新しい数学上の概念として導入されていきます。カルダノの弟子であるフェラーリが4次方程式の解法を発見し,ガロアとアーベルが5次以上の方程式の解の公式が作れないことを証明しました。ところで,ガウスの「n次方程式には重複も含めてn個の解が存在する」の証明は,今の高校生には難しいでしょうが,複素数平面も復活しますし,このような話も出来るのではないでしょうか?
先生はホワイトボードに数式の変形等を丁寧に板書してくださり,多くの参加者は一所懸命にメモをとっていました。楽しく興味深いお話・授業といった雰囲気で,あっという間の90分間でした。
講演 阿原一志 先生
阿原 一志 先生のプロフィール
1963年に東京でお生まれになり,東京大学理学部数学科を卒業後,1992年に東京大学大学院理学研究科数学専攻博士課程を修了。明治大学の助手・講師を経て,現在,明治大学理工学部准教授としてご活躍中。ご専門はコンピューティング・トポロジーで,位相幾何研究に従事され,位相幾何のソフトウエア開発も行っておられます。また,「大学数学の証明問題-発見へのプロセス」,「考える線形代数」,「確率・統計の初歩」,「ハイプレイン-のりとはさみでつくる双曲平面」など,多くの著書があります。

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