平成23年度千葉県高等学校教育研究会数学部会総会・春季研究大会が,以下の開催要項にしたがって,実施されました。
参加人数: 84 名
1 主 催 千葉県高等学校教育研究会数学部会
2 後 援 千葉県教育委員会
3 期 日 平成23年6月1日(火)
4 会 場 千葉県立木更津東高等学校
5 日 程 受付(弁当注文) 9:00~ 9:45
公開授業(2限) 9:50~10:40
総 会 10:50~11:40
連 絡 事 項 11:40~11:50
昼 食・休 憩 11:50~12:50
研 究 発 表 12:50~13:50
講 演 14:00~15:30
研 究 協 議 15:30~16:00
閉 会 16:00
6 内 容
(1)総会
①挨拶(部会長,教育委員会,会場校校長,会場校数学科主任)
②議長選出
③議事
ア 平成22年度事業報告
イ 平成22年度収支決算報告,監査報告
ウ 平成23年度事業計画案審議
エ 平成23年度予算案審議
オ 千葉県高等学校教育研究会数学部会地区割再編及び規約改正
カ 平成23年度地区委員選出及び部会長,会計監査の推薦・承認
キ その他の役員委嘱
ク その他
(2)研究発表
①「平成23年度大学入試センター試験(数学)のアンケート調査結果について」
千葉県立佐原高等学校 宮部 智哉 先生
千葉県立成東高等学校 大木 喜信 先生
発表内容 ア アンケート結果(受験生)
・数学の受験型
・得点分布
・志望学部
・得意とする項目,苦手と
・問題ごとの難易度,正答
・全体を通して問題の程度
・受験勉強の開始時期
イ アンケート結果(数学科主任)
・各問題の難易度,計算量
・各問題について,思考力を必要とするか?
・各問題について,学校の授業(補習を含む)だけで十分だと思うか?
・問題の量は?
・数学全領域のバランスは?
②「学校評価における評価項目・指標等を検討する際の視点の考察
-教育課程・学習指導(授業評価)の質問項目の研究・分析-」
千葉県立千葉東高等学校 鈴木 善光 先生
発表内容 自らの授業の展開・指導の有用性を確認するため,実態を踏まえて授業評価し,「授業力」の向上に反映できるように授業評価の在り方を考察した研究。
数学アンケート結果(後期期末考査を終えて)
・進路志望は文理どちらですか?
・大学受験等で数学を使いますか?
・授業の進度は?,授業の説明は?,授業での説明の仕方は?,授業で扱われている内容は?,授業の展開・形式は?,1年間のあなたの数学の授業・学習への取組は?
・1年間の授業に対する意見・感想
・あなたにとって数学とはどんな存在ですか?
(3)講演
「3次方程式のカルダノの公式と複素数のべき根について」
明治大学 理工学部 准教授 阿原 一志 先生
講演の概要
3次方程式のカルダノの公式は,どのような歴史的経緯のもとで生まれたのか?そして,その後の複素数をめぐる数学にどのような影響を与えたのか?そのような話を中心に,3次方程式の解の公式の話をしてくださいました。以下が,お話の概略です。
1次方程式と2次方程式は,古代バビロニアでも考えられていたが,解は有理数として扱っていました(ルートの表もあった)。無理数の定義はピタゴラスで,「万物は数である」の「数」とは「有理数」のことでした。
16世紀,イタリアでは数学の競技があって,賞金もあったといわれている。公式は,秘中の秘とされ,師匠が弟子に秘密裏に伝承するものでした。3次方程式の秘蔵の解法を身につけたタルタリアという人から,カルダノは誰にも教えないという約束でその解法を入手しました。しかし,カルダノは「アルス・マグナ」という本に掲載してしまったのです…。
これが「カルダノの公式」ですが,「複素数の3乗根」が出てきてしまう場合があり,当時はこれを解なしと扱っていました。公式は不完全か?これをどう解決するかというと,例えばx^3=6x+4は,ド・モアブルの公式を使って偏角から求めると,実数解x=-2が求まります。この内容は,高2の3学期ぐらいで十分やれるのではないでしょうか。
「3次方程式が解けるようになった」という意味で,カルダノの公式はすごい。16世紀に定義はされていた虚数について,デカルトなどは現実にはありえないから考えなくていいとしてきましたが,こうして虚数が新しい数学上の概念として導入されていきます。カルダノの弟子であるフェラーリが4次方程式の解法を発見し,ガロアとアーベルが5次以上の方程式の解の公式が作れないことを証明しました。ところで,ガウスの「n次方程式には重複も含めてn個の解が存在する」の証明は,今の高校生には難しいでしょうが,複素数平面も復活しますし,このような話も出来るのではないでしょうか?
先生はホワイトボードに数式の変形等を丁寧に板書してくださり,多くの参加者は一所懸命にメモをとっていました。楽しく興味深いお話・授業といった雰囲気で,あっという間の90分間でした。
阿原 一志 先生のプロフィール
1963年に東京でお生まれになり,東京大学理学部数学科を卒業後,1992年に東京大学大学院理学研究科数学専攻博士課程を修了。明治大学の助手・講師を経て,現在,明治大学理工学部准教授としてご活躍中。ご専門はコンピューティング・トポロジーで,位相幾何研究に従事され,位相幾何のソフトウエア開発も行っておられます。また,「大学数学の証明問題-発見へのプロセス」,「考える線形代数」,「確率・統計の初歩」,「ハイプレイン-のりとはさみでつくる双曲平面」など,多くの著書があります。