平成23年度千葉県高等学校教育研究会数学部会秋季研究大会が,以下の開催要項にしたがって,実施されました。
参加人数: 93 名
1 主催 千葉県高等学校教育研究会数学部会
2 後援 千葉県教育委員会
3 期日 平成23年11月4日(金)
4 会場 千葉県立生浜高等学校
5 日程 受 付(弁当注文) 8:50~ 9:25
公開授業(2時間目) 9:30~10:15
開会・挨拶・諸連絡 10:20~10:40
研 究 発 表 ① 10:45~11:15
研 究 発 表 ② 11:20~11:50
昼 食(「香取・銚子地区」及び「長生・安房地区」打合せ)
研 究 発 表 ③ 13:00~13:30
研 究 発 表 ④ 13:30~14:00
講 演 14:10~15:40
研 究 協 議 15:40~16:00
閉 会 16:00
6 内容
(1)研究発表
①「平成23年度計算力テスト実施結果について」
千葉県立木更津東高等学校 三浦 和雅 先生
②「千葉県内の大学入試問題(数学)に関する研究
~平成23年度東京理科大学の入試問題を中心として~」
千葉県立小金高等学校 坂本 大輔 先生
③「文字の書き方,記号の読み方」
千葉県立野田中央高等学校 小林 中 先生
④「通信制高校における数学教科指導(数学Ⅰ,数学Ⅱ)の実践
-生徒の実態に基づいた面接指導(スクーリング)の展開-」
千葉県立千葉大宮高等学校 尾村 博昭 先生
(2)講演
「コンピュータ・アートの再発明」
多摩美術大学 情報デザイン学科
情報芸術コース 教授 久保田 晃弘 先生
講演の概要
先生がここ何年かの間に制作したコンピュータを用いた作品を紹介していただきながら,「誕生から50年以上経過したコンピュータ・アートの今日的な意義について」を再考するお話をしていただきました。
前半は,府中市美術館で開催されている公開制作「ハイブリッドアートラボ」(メディアアート・デザインとものづくりを融合するプロジェクト,平成23年9月17日~11月23日)を中心に説明・紹介いただきました。「デジタルファブリケーション」(カッティングマシーンや3Dプリンタなどデジタル工作機器によるものづくり)について,作品映像を交えながら制作の技法や美術的視点を丁寧に解説していただきました。以下が,お話の概略です。
・クラフト・ロボを使って点描画的に銅板を彫っていく「アルゴリズム版画」では,時々不思議な形が出てくることがある。手で出来ることをコンピュータでやっても面白くないが,両方組み合わせることによって,速くやるだけでなく何かがある。
・いかに,情報にスケール(次元)を与えるか。どうでもよいのではなく,適正なスケールを考えることになる。
・情報形態可逆変換法。情報と形をどうやって結びつけるか。アルゴリズムで変換し,3次元の彫刻をする。任意のビット列から形を作る。
後半は,50年以上経過したコンピュータ・アートがどういう意味を持っているかについてお話いただきました。以下が,お話の概略です。
・メディアアート(コンピュータを使ったアート)。インタラクションデザイン(人と人(もしくは人間の代わりにあたるもの)の間に発生する「インタラクション(対話)」を促進するための技術)。
・Processing(グラフィックデザイン用プログラミング言語),Design By Numbers(DBN,描画シミュレーション用のプログラム言語),オープンソースで配付。
・美大生に,Photoshop,Illustratorといったアプリケーションソフトを使わずに,線を引くといった基本的なことからコマンドでやらせてみる。ボールがバウンドするというアニメーションをプログラムコードでどうすればよいかを考えさせる。
・今までの美術は完成品を提供するものだったが,実行の結果として,変化していく。ソフトウェア・アート。
・いつでも,どこでも,だれでも,アートを体験できる。1960,70年代のものがネットワーク環境でできる。
最後に,「鉛筆デッサンとかを高校でやっていて,Processingのようなものをもう少し早くやっていると,世界に羽ばたける者を育成できるのではないだろうか。数学と美術(図工)が高校生を刺激できないだろうか。私は理系(文系)ですから…ではなく,境界をつなぐ場が社会にあればよいと思っています。」と,高校においてもハイブリッドに活躍できる生徒の育成が重要であることをお話しいただきました。音楽,美術,工学…さまざまな領域で活躍されている先生からの貴重な興味深いお話で,あっという間の90分間でした。
久保田 晃弘 先生のプロフィール
先生は,1960年大阪府のお生まれで,東京大学・工学部・船舶工学科を卒業後,東京大学・大学院・工学系研究科・船舶工学専攻博士課程を修了され,東京大学・工学部・船舶海洋工学科の助手・講師・助教授,そして東京大学人工物工学研究センターの助教授として,非線形数値流体力学と設計科学に関する研究を経て,1998年から現職としてご活躍中。
工学研究と幼い頃から身につけてきた音楽的な素養をバックグラウンドに,アートとコンピューターの関係について研究され,アルゴリズム・インターフェイス・音響の3つをテーマに,デジタル表現における素材論に関する考察と制作を行われております。
現在は,さまざまな領域を横断・結合するハイブリッドな創作の世界を精力的に開拓中で,細胞や生体を素材とした「バイオメディア・アート」,オープンなデジタル工房のネットワークとしての「デジタル・ファブリケーション」と「ソーシャル・マテリアル」,超小型人口衛星を活用した「衛星芸術」,などのプロジェクトを推進されています。
また,「FORM+CODE-デザイン/アート/建築における,かたちとコード」,「消えゆくコンピューター」,「ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック」など,多くの著書があります。